2018年2月14日

コラム「ワインが人を成長させ魅力的にする」

今日は「ワイン会」について書きます。
ワイン会はちょっと特別な空間で一風変わったルールみたいなものがある。38歳を超えてからのワイン会。最初のうちはとまどいがたくさんあった。でも私も少しずつ彼らの文化が体に染み込んできているので、そのうち気がつかなってしまうと思うから今のうちに書き残したい。


もう何度目だろうか今日はN嶋さん家で男3人のワイン会。
2人が交互にキッチンに立ち、各々が買っておいた食材で料理を手際よくさっと作る。
(ちなみに私は恥ずかしながらまだ作ったことが無い)

まず人物像を書いておこう。私たち3人は農業の研修で2年間を共にしたワインブドウ栽培の研修生仲間だ。

まずN嶋さんは50代男性。ワインバーを2店舗経営していた経験豊富なシニアソムリエ。何をやっても器用にこなす音楽とワインをこよなく愛する男である。いつでもまっすぐな背筋、インテリで知的な雰囲気。国でいうならフランスだろう。

もう一人のS井君は20代。シェフの経験を持つユーモラス。彼が料理を愛していることは料理の話になるといつもの1.5倍話す様子を見れば分かる。食べることが大好きで汗だくになって農業に打ち込んだあの暑い夏でもぽっちゃり体系を維持していた。見た目も正確もイタリア人っぽいなと思う。

ちなみに私は先月40代になった。そんな20代、40代、50代の生きてきた時代も価値観も何もかも違う3人の男が「ワインを作りたい」という唯一の共通点で出会い、友人となったわけだ。

さて。
まずワイン会では一人1本のワインを持参する。3人なら3本。20人集まれば20本にもなる。ひとりで1日に3本のワインを開けるのは難しいわけで、いろいろな種類を飲みたいワイン好きとしては「ヒトリイッポンシステム」は異論の無いのシステムなのである。


では持ってくるワインをどうやって選ぶのか。「今日はボルドーね」などテーマが決まっていることもあるけど大抵は決まってない。ワイン会は数日前のワイン選びから始まる。お店だったり、ネットショップだったり、自宅のワインセラーから選ぶ成功者も居るだろう自分が飲みたいか誰かに飲ませたいワインを持ってくれば間違いない。ワインは種類が多いことに加えて、ヴィンテージ(収穫年)が違うだけで別物となるので、20人集まっても被ることはまずない。

お金を払えば料理がついてくるワイン会ならそれだけで済むのだけど、自分たちで料理をするとなるとメニューも考えることになる。

通常の飲み会なら「今日何にする?」「鍋ー」「焼肉!」とか食べたいもので決めていた。もしくは「中華」「和食」で入るお店や買うものを決めていたはずだ。だけどワイン会は違う。1品1品、ワインに合わせたい料理を考える。

しかしあるとき、S井君が「あれ食べたいなー」と言いながら食材を買っていたことがあった。食べたいものを買ってたら持ってきたワインに合わないじゃないかって?確かにそうであるが、ワイン会では複数のワインが集まるので、誰かのワインが誰かの料理に合うことも多い。これは幅広い味わいのあるワインだからこそだろう。

ちなみに、ワイン会に持っていくワインはサプライズ要素があるらしく、事前に「赤?白?」と聞くことはあっても、どのワインを持っていくかはお互い言わない。これも面白い。

その逆でS井君は持っていくワインからマリアージュを考えて料理の食材を選んでいることもあった。スーパーのお肉コーナーの前で「あれにはあれが合いそうだなー」と料理の味とワインとの相性をうれしそうに想像しているのだ。



そしてワイン会が始まると料理が始まる。料理に合ってこそのワイン。男たちがキッチンでささっと調理をこなす姿はかっこいい。しかし、あれ?しかし最初のころはここでも違和感があった。この違和感はなんだろう。

そういえばそもそも男3人で料理会などするだろうか?調理師を志す仲間とかならいざ知らず、男が男の家に言って男に料理を振舞うだろうか。相手が女性であればたまに男性が腕を振るうことはあれど。例え友達に料理を作ることがあったとしてもせいぜいもやし炒め程度だろうし、男に出す料理に色合いでふきのとうを入れたり、サラダにマグロやタコを入れたりはしないはずだ。

それがワイン会では、在りえる。ワインは酔うためのお酒ではあるけど、合わせる料理もワインと同じくらい大切だからだ。ワインと料理の相性(マリアージュ)を本気で考えて本気で料理して全力で楽しむのだ。

ほのかなワインの香りを逃がすまいとある者はグラスに鼻を突っ込み、ある者は口に含んだワインに空気を送るためにジュルジュル言わせ、ある者は味に集中するために目を閉じて味わっている。


更に、各々が持ってきたワインの生産者や産地、畑の土壌や傾斜、その年のその国の気候、栽培方法や醸造方法、何年寝かせたかなど、そしてラベルのデザインに至るまでが話題に上る。

もっと言えば私たちは作り手である。こんなワインが作りたい、このワインはどうやって造っているのだろう、気候がこうだから雨量がこうだから仕立て方はこうで・・・とワイン100%の時間を過ごせるのだ。なんと有意義で楽しい時間なのだろう。

ワインが好きな人に食事も好きな人が多いのは偶然ではない。ワインがその人の食事への向かい方を成長させてくれるのだと私は納得している。私もいつかキッチンに立って仲間にワインに合う料理をさっと振舞いたい。今はまだ恥ずかしいのでもう少しだけ時間がもらえたら幸いである。

つづく。

1 件のコメント:

  1. いいな~ S君の料理たべたい。Nさんの秘蔵ワイン飲みたい~

    T.Nakamura

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