2012年9月13日

種なしぶどうを作るための農薬について


あべっちです。眠いです。でもこれだけは書いておかねばという使命感で書いてます。

さて,こないだ知り合いの農家の方からぶったまげるような話を聞きました。
なんでも種なしのぶどうは農薬を使うことにより出来るとのことでした。種なしの果物はずっと農家や農協の努力のたまものの品種改良で出来たと思っていたのでショックでした。


現在売られている野菜や果実は特に記述がない限りはほぼ間違いなく農薬や消毒をしていることは知っていましたがそれは殺虫剤系や消毒系だと思ってました。それがまさか種を作らせないというさながら遺伝子組換えのような加工がされていたんです。
 通常は植物の雌しべの根元にある子房が受粉をすると中に種子ができ,肥大を始めて果実に育っていくという流れです。それをこの農薬(具体名はジベレリン)を使用することにより,花粉ではないもので子房を肥大させ,果実をつくります。受粉してないので当然,種は出来ないというわけです。


これを皆さんがどう思うのかは皆さんの価値観で決めて頂きたいのですが,このような事実を知っておいて損はないと思います。いや,消費者は知るべきです。そして出来るだけ食べ物を選ぶべきです。

私からすれば,頭をニュートラルにもどして考えてみてもやはり種を作らない果物は変だと思ってしまいます。子どもを残さない植物なんて。F1種と同じですものね。奥さんに話したところ,「それって例えば女性に赤ちゃんを作れなくするってことでしょ?なんだかなぁ。」的なことを言ってました。

そういえばどこかの国では食べやすくするために骨のない魚を作ったりしたと聞きました。食べやすいから,便利だからという理由でこのような農薬が常識になってしまったわけです。
 他にも裂けてしまったトマト,皆さんは買いませんよね?でも裂けるのを防ぐ農薬が使われているとしたら?キュウリをまっすぐに作るために農薬が使われているとしたら?私は裂けたトマトが良いわけでも曲がったキュウリが良いと言ってるのではありません。情報として知っていて欲しいのです。そして繰り返しますが選んで欲しいのです。そしてあわよくばこのような魔法のような薬を使わずに頑張ってる人間が居ることをどうか知って欲しいと心から願います。

この際,ずっと思っていたことを書いてしまいますが,そもそも農薬の世界では殺虫剤のことを「消毒」と呼んでいるのですが,毒を消すどころか毒を撒いておいて消毒とは便利な言葉を作ったなぁと思います。

暗い話になってしまいましたが,次は明るい記事を書きたいです。ではっ!

2 件のコメント:

  1. はじめまして、山羊の掲示板から来ました。私はブドウ農家なのでジベレリン処理と種無しブドウについて解説させて頂きたく思います。まず品種改良で種無しになってないのかとのご指摘ですが、そういう品種もあります。”ハニーシードレス””ヒムロッドシードレス”や”ナガノパープル”などは染色体が3倍体なので種が元から出来ません。遺伝子組み換えでは無く突然変異の倍数体と通常の作物の交配で作出されます。でも、これらの品種もジベレリンは使います。
      書かれているようにジベレリンは植物ホルモンの一種で種などに含有され、様々な働きの一つに果実の生長促進があります。乱暴に言うなら受粉する前に受粉した事にさせて成長させると種が出来ません。また種が無ければ自前のジベレリンも出来ないので果実が生長しないため、種無し品種でもジベレリンを与えて成長させる必要があります。確かに成長を自然条件とは異なるようにしてはいますが、ブドウが含んでいない物を与えて種無しにしている訳ではありません。厳密にはジベレリンにも種類があるので、本来の自前のジベレリンでない物を処理しても種無しにはなりません。感覚としては処女懐妊に近いですね。
      ジベレリンが農薬である事については、農水省の農薬の定義的な問題であり、今はなんでもかんでも登録農薬にしようという動きなので、ジベレリンがブドウに内在する物質であろうがなかろうが、成分や効能・副作用を通り一遍の検査をして登録されています。下手すると葉面散布剤(肥料)すら農薬登録させられています。有機農法で世界的に認められている石灰硫黄合剤やボルドー液も農薬です。当然ですが、ジベレリンには人体に何の影響もありません(あれば種有りブドウ食べる方が問題になるはずです)。いかにも農薬で種を消す薬としてはストレプトマイシンという物が登録されています。こちらは正直言うと散布時の濃度ではちょっと体に影響あるんじゃないかと私は感じます(というか医薬品と同じ成分です)。
      F1と不稔性に混同が見られるようですが、一部のF1(タマネギなど)はそれを作り出す便宜上、不稔親を使いますが、F1だから不稔という事はありません。固定品種でないという意味なら、おっしゃる通りですが、ブドウは皆挿し木して作るクローンなので、名が通った品種でも実生は別の性質を持ちます。
      ジベレリンが魔法の薬かどうかと言うと、私のようなポストジベレリン世代としては「厄介な薬作りやがって」という気持ちと「でも、これがあるから安定栽培が出来ている」という気持ちが半々です。ジベ処理は非常に面倒で、果実以外に付着させると木が駄目になるので散布ではなく一つ一つ浸す必要があり、気象条件や適期が狭く、なくて売れるならその方がいいでしょう。一方で巨峰をはじめとする大粒種が栽培可能なのはジベレリンで強制的に結実させるためで、放置するとそもそもこれらの品種は実が出来づらいです。
      ブドウ産地の長野県民やプレジベレリン世代の大人は当然のようにジベ処理を知っているので隠している訳ではないのですが、大消費地の若い人など知らない人が増えてきていて、それに対するアナウンスが足りないのではないかと言われると、そうなのかも知れません。食に関心を持つ人が調べる事も歓迎すべきでしょう。ただ危険度だともっと高いであろう薬(ネオニコチノイド系や浸透系殺虫剤)があるので、ジベを不自然というだけで特別視する事の優先度はそれほど高くないように感じます。もちろん、その不自然さに敏感である事は貴重な感性ではあります。私も一般防除資材の使い方などは気にしますが、ジベレリンは仕方ない物として諦めていたのを気づかされました。
      ただ種ありブドウも作っていますし、正直そこらへんのブドウは栽培のハードルがとても低いので、JAS有機取得も簡単で張り合いがないという所ですね。ジベでブドウ農家は楽はしていません。
      いささか現状追認の自己擁護のような文面になってしまいました。持続可能農業、あるいは自然農法を長野県で実践される事を応援しています。(投稿ミスで重複してたらごめんなさい)

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  2. 丁寧な文章での返信、とてもありがたく思います。勉強になりました。各必要もないと思いますが私自身、ひよっこ農家で分からないことだらけです。私が農薬を使わない理由の1つに「農薬の勉強が大変だから」というものも含まれております。

    どの辺りまで農薬かの部分は私も悩みました。私は使用しませんが不自然な物を農薬というなら牛乳だって木酢液だって自然には植物に付かない物。それなら農薬じゃないかという出口のない葛藤がいつも頭にあります。

    「良い物を作る」という努力は好きです。でも「不自然なこと」は好きじゃない。この2つが同居してしまってる私は結局、何も出来ない人間なのかもしれません。

    事実、獣害ネットですら購入した物の、支柱部分を採集してきた竹で作ろうとして時間がかかり、結果、断念していたりします。これでは家族に迷惑をかけるだけで自己満足ではないかと反省してます。

    村上さんの想い、よく分かりました。311の原発事故以来、人の顔色ばかりうかがってきた私は表現する必要性を感じました。ダメと思ったらダメだと早く表現しないと、例えば脱原発やTPP、徴兵制などこの国はどんどんダメになっていくと。

    でもこうして私が書いたことで、村上さんの助言を頂け、私の足りない部分を補って頂けたので、結果的には良かったなんて思ってます。感謝します。

    大それた話になりますが、私は最近、命や地球のことばかり考えてしまってます。農薬は嫌だ、遺伝子組替えは嫌だ、中国産は嫌だ、放射性物質を少しでも含んでいたら嫌だ、市販の堆肥や鶏糞は危険かもしれないので嫌だなど。

    そんなこだわりのせいで鶏の成長は遅れ、今年は野菜も満足に出来ませんでした。家族に迷惑をかけました。生きていくためにはお金も必要、バランスが大事だと痛感しました。

    私も成長したいと思います。ありがとうございました。

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